奈良地方裁判所 昭和63年(わ)111号 判決 1988年6月28日
本籍
奈良県五條市二見一丁目七九二番地の五
住居
同市二見一丁目二番九号
会社役員
堀川浩美
昭和九年五月一三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官南野聡出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金八〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金八万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、奈良県五條市二見一丁目三番四一号において、五條タイヤ販売の屋号を使用してタイヤ・アルミホイール等自動車付属品の小売業を営んでいたものであるが、自己の所得を秘匿して所得税を免れようと企て、
第一 昭和五九年分の総所得金額は、一、七一七万二、二三八円、これに対する所得税額は四七六万三、一〇〇円であるのにかかわらず、申告に際しては、総所得金額をことさら過少に記載した内容虚偽の確定申告書を作成するなどの不正手段により、その所得金額のうち一、二九一万八、五六九円を秘匿した上、昭和六〇年三月一五日、同県大和高田市三和町二番一七号所在の所轄葛城税務署において、同署長に対し、総所得金額が四二五万三、六六九円、これに対する所得税額が四九万六、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同五九年分の正規の所得税額四七六万三、一〇〇円との差額四二六万六、九〇〇円をほ脱し
第二 同六〇年分の総所得金額は、四、一五七万八、七五〇円、これに対する所得税額は一、八五四万七、七〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち三、六九三万四、八二七円を秘匿した上、昭和六一年三月一五日、前記葛城税務署において、同署長に対し、総所得金額が四六四万三、九二三円、これに対する所得税額が五七万八、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同六〇年分の正規の所得税額一、八五四万七、七〇〇円との差額一、七九六万九、六〇〇円をほ脱し
第三 同六一年分の総所得金額は、四、三七八万六六二円、これに対する所得税額は二、〇二〇万一、四〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、その所得金額のうち三、九二〇万二、四三八円を秘匿した上、昭和六二年三月一六日、前記葛城税務署において、同署長に対し、総所得金額が四五七万八、二二四円、これに対する所得税額が五五万七、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって、同六一年分の正規の所得税額二、〇二〇万一、四〇〇円との差額一、九六四万四、三〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示各事実を通じ
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 車谷好彦、堀川早子、堀川博司、堀川ひとみ、堀川敏広、堀川智恵美、川西繁夫、池辺政祐、内原一誠、増田保、川井好隆、川合敏二、阪田新司、宮口武巳、近藤哲三、上南光志、和田全啓、坂本忠資、中山智之、田花佳典、山本康晴の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官ら作成の各査察官調査書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料
一 検察事務官作成の電話聴取書
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書、証明書(検察官請求証拠等関係カード1、4)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書、証明書(前同2、5)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書、証明書(前同3、6)
(法令の適用)
一 判示各所為につき
所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑を併科)
二 併合罪の加重につき
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情最重の判示第三の罪の刑に加重)
刑法四五条前段、四八条二項
三 労役場留置につき
刑法一八条
四 懲役刑の執行猶予につき
刑法二五条一項
(裁判官 菅納一郎)